3/31 Caffè

 私はコーヒーが大好きだ。それは日本にいたときから変わらないのだが、イタリアでのコーヒー事情は日本と少し違う。今回は生き物から離れて私のコーヒー生活について書いてみようと思う。

 まず基本的な事であるが、日本で多く飲まれているのはドリップコーヒ、イタリアで飲まれているのはエスプレッソコーヒーだということ。
 ドリップとは名前の通り、粗めに挽いたコーヒー豆にお湯か水を少しずつ垂らし(ドリップ)フィルターを通して淹れられるコーヒーのこと。家庭用のコーヒーメーカーもほとんどがこれだ。そのまま飲む人もいれば砂糖やミルクを入れる人もいる。
 それに対してエスプレッソとは細かく挽いた豆に圧力をかけてお湯を通す淹れ方。淹れると言うよりはむしろ抽出といった具合だ。強い圧力によって抽出されたコーヒーはドリップコーヒーとは比べ物にならないくらいドロっと濃く苦く香り豊かで、そして少量だ。当然カップも驚くほど小さく、そこに必ずと言って良いほどが大量の砂糖が入れられる。少量の濃いエスプレッソに大量の砂糖…言ってみればコーヒーシロップみたいになるわけだ。これを「クッ」と飲むのがイタリア式。これを単にカッフェと言う。またバールでカフェを頼むと横に小さなショットグラスに入れられたミネラルウォータが添えられる場合もある。カフェを飲んだ後にこの水を飲むと何故かたまらなく美味しい。

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 イタリアにはこのカッフェを基本にしたメニューがたくさんある。代表的なもので言うと、カプチーノ(泡立てた牛乳をエスプレッソの上に注ぐ)やカフェラテ(イタリアではラッテ・マッキアートという。エスプレッソに温かい牛乳をたっぷり注ぐ)等がそうだ。イタリアではそれらにルールと呼べるほどのこだわりがあり、例えば食後なんかにカプチーノを注文するとちょっと店員さん(バリスタと言う)に変な目で見られる。牛乳を多く使ったメニューは朝食と一緒に取るものという暗黙の了解(イタリアカフェルール)があるからだ。食後は通常普通のカッフェかそこにサンブーカ等の強いお酒を加えたものを飲む。最近は大人になった気分でこれを楽しむ事が多い。すっきりとして食後には最適だ。

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 さて、その美味しいカッフェだが立派なエスプレッソマシーンで淹れなくては本物の味は出ない。そりゃもう本当にでかい機械なもんだから家にマシンを置いている家庭はほとんどない。そこで登場するのがバールである。
 バールとは日本語(いや英語か)で言うバーなのだが、日本のバーのように堅苦しい場所ではない。街の至るところにそれはあるし駅なんかには必ずと言って良いほどついている。学生やサラリーマンが甘いパンとカプチーノで朝食を取る場でもあるのに、昼から近所のおっさんが集まってワインやら何やらの酒を飲む場でもある。と思えば学校帰りの子供が駄菓子を買っていったり、優雅なマダム達がカフェを飲みながらおしゃべりに花を咲かせる場所でもあるのだ。日本には決して無い楽しげな施設、これがバールだ。私はこのバールが好き。行けば必ず誰かとお喋り出来るし、手軽に昼食を取る事もできる。もちろん美味しいカフェだって飲める。一杯のカフェの平均価格は大体1€、お財布に嬉しい価格なのに大抵の人は遠慮も無く長居してくっちゃべってる。

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 ではイタリア人は家庭でコーヒーを淹れないのか?というとそうではない。イタリア人は僕と同じくカッフェが大好きなのである。自宅に小さなマシンを持ってる人も多いし、今は豆のカートリッジを入れてエスプレッソを手軽に抽出出来る便利な家庭用マシンもある。
 そんな進んだ時代において生き残っている名品が直火式「モカエキスプレス」(通称マキネッタ)だ。生き残っていると言うよりはだんとつでシェアNo.1。イタリア人はこれで淹れたコーヒーを「モカ」と呼ぶ。仕組みは原始的。原理は省くが、おおざっぱに言ってしまえば圧力で抽出するタイプだからエスプレッソに近い味になる。バールで飲むカッフェとは違いそこまでの濃さは期待出来ないのだが、これはこれで美味しいコーヒーができる。といっても淹れる人や使うマキネッタによって大きく味が左右されるのがこれの特徴…

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 このモカは何かと難しい。マキネッタ自体のメーカーや材質、使う豆の選択や豆の詰め具合によって味が大きく変わってくるからだ。だから慣れるまでは失敗も多い。でも私はこの「マキネッタ」が大好き。自分だけのマキネッタを育てる感覚がたまらなく好きなのだ。というのも、アルミ製の「モカエキスプレス」は使い込むほどに味がしみ込み美味しいコーヒーが淹れれるようになると言われている。という事で基本的にこの機械は洗わない。使い終わったらさっと水ですすぐ程度だ。こうすることでアルミに香りが付きコーヒーの油膜が張るらしい。イタリア人の家庭には必ず使い込まれたマキネッタが台所に置かれている。不思議な事に同じ豆、同じメーカーのマキネッタを使っても同じ味になる事はまず無い。使い込むほどにその家の味になって行くのである。もちろんイタリア人達はほぼ全員が「うちのカッフェが世界で一番美味しい」と思っている。
 もちろん私のモカもこだわりのもの。ビアレッティという老舗メーカーのもので材質はもちろんアルミ。普通は銀色の物が多いがこれは少し変わっていて茶色のカラーリングがされている。こっちに来てからほぼ毎日使い続けたマキネッタ、今ではカラーリングされてない部分までコーヒーの色が染みて茶色になっている。言うまでもないが「私の」マキネッタで淹れたカッフェは最高に旨い。朝に一杯、昼食を家で食べた後に一杯、休憩時に一杯、夕食後に一杯…お気に入りのカップ達と一緒に私より働いている。

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 夕食後に飲んだら眠れなくなっちゃうのでは、という心配はご無用。イタリアではデカフェ(カフェイン無し)のコーヒーがとてもポピュラーだ。バールでもレストランでも家庭用の豆でも、デカフェが無い事はほとんどない。だからちょっと神経質な人でも夕食後にカフェを飲む事ができる。ささやかな贅沢である。緑の筒がデカフェの缶だ。

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 さてこの写真は帰国時に持って帰る私のカフェ達。家族もイタリアのカフェが好きなのでお土産にも最適だ。
 もうすぐ日本に一時帰国、もちろんお気に入りのマキネッタ、カフェと一緒だ。

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[ 2013/04/01 07:37 ] 未分類 | TB(0) | CM(2)